HOME > 視聴室『ボワ・ノワール』の電源システムが大変更!

私の試聴室『ボワ・ノワール』が遂に電源の大幅な改善に踏み切った。きっかけとなったのは、本誌の特別増刊「電源&アクセサリー大全2004」で書いた、DENTECのIPT3000ノイズカット電源の導入であった。

 

これを導入した時の音質の改善は、それこそ目ざましく、“背筋がゾクッとした”という表現は決して誇張したものではなかった。

 

実はこの製品を導入した時、壁コンセントとブレーカーを変えていた。その場で行った音質上のバランス補正だ。IPT3000を入れた効果は、凄まじいほどの分解能と力感の向上であった。しかし、全体のエネルギーバランスの軸が、やや高域に寄る傾向があった。

 

その時、これを試してみては、と薦められたのが、クライオオーディオテクノロジーのブレーカーSCBR-20ASと、壁コンセントSC-1256-200Vであった。その場でこの2点のパーツを交換したところ、バランスが好ましく整った上、さらに分解能が向上したのだ。

 

コンセントとブレーカーを取り替えただけでこれだけ変わるのだから、屋内配線まで取り替えれば、さらに効果が増すはずである。

 

その理想形を想像すると、もういてもたってもいられなくなった。DENTECに相談したところ、関係が深いクライオオーディオテクノロジーを紹介してくれた。同社は、すでに、スーパークライオ処理を施した電源の線材やアクセサリーを数多く製作している会社で、大阪営業所の友人が、私の相談に乗ってくれた。

 

一応、自宅の配線を見てもらい、何処をどう変えたらいいかの意見を聞き、それを知った上で、いろいろと検討し、工事をお願いすることにした。

 

私の家の電力計は屋外にあるが、全室に電力を分配する配電盤は、ボワ・ノワールの中にある。ここまでの配線は、60A用の太いケーブルで配線されていたので、これはそのまま使用し、配電盤以降のオーディオ、ビデオ用回線を新しく取り付けることにした。そのプランが下記表だ。

スーパークライオ処理に関しては、その好ましい効果は確かめていたが、一応、資料を取り寄せ、勉強もしている。

 

現在、クライオ処理を施したと言われる製品は数多いが、その全てが同じ処理を施しているとはいえないようだ。

 

好ましいクライオ処理に必要なのは、徹底した温度管理と、長時間の処理である。クライオオーディオテクノロジーの資料によると、スーパークライオ処理の説明として、「それぞれの部材に適した処理を行う為に、同一材料を大量に処理する」とあり、「処理時間と温度制御を徹底的に見詰め直し、温度の下げ角、上げ角の時間的タイミングや、トータル時間の大幅な延長及び見直しによって、物性的、音質的にほぼ完璧といえるクライオ処理が実現した」と書いてある。

 

これが物性を変える際に好ましく働くことは、感覚的に掴むことができると思う。ここまで分かれば、賭けてみるべきだ、というのが私の結論である。

 

工事を行ったのは7月末のことである。午前10時から工事を開始し、午後4時近くに終了した。

 

工事を行った電気商会の方と助手の方は順序立てて手際よく、作業を進行させていく。ケーブルの外被の剥き方、太い回線の壁での這わせ方、止め方、すべてが目新しく、感心しながら眺めていた。

 

他誌で読んだが、電気商会の方は大のオーディオファイル。家ではウィルソン・オーディオの高級スピーカーを駆使する超マニアだ。感心したのは、電気配線のプロでありながら、オーディオ誌から得た知識を活用されていること。

 

評論家F氏が書いた、プラグとケーブルの圧着方法(片側にダミーの線材を噛ませて、止めネジの圧力のバランスをとる方法)を取り入れていた。その向上心の豊かさに心温められた。

 

専用回線に使用したのは、新製品のスーパークライオ電源ケーブル、SCVR-3.5である。これは、600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルで、導体の公称断面積8mm2の3芯ケーブル。シースの外径は約16.5mmという極太のケーブルである。

 

4系統の専用回線の末端に取り付けるコンセントボックスは、チクマ製の高級コンセントボックスA7075を使用している。これは超々ジュラルミンと呼ばれる最強のアルミ合金製のボックスで、同社の製品中でも最も音質が優れたモデルである。これに取り付けているのは、クライオオーディオテクノロジーのスーパークライオコンセントSC-1256-200V(200V用)、SC1229JIS(100V用)である。各ボックスとも、2個のコンセントを取り付けている。

 

工事が終わり、いよいよ、音出しの時がやってきた。プレーヤーとフロント側アンプの電源は、ノイズカット電源IPT3000(200V仕様容量3kW)から取り、リアアンプの電源は、アコースティック・リヴァイブの電源ボックス(200V仕様)から取り、プロジェクターの電源は、オヤイデのステップダウントランスCS-1500T(200V仕様)から取っている。

 

最初にかけたCD『アルジェのイタリア女』が鳴り出した瞬間、私の顔は綻んだ。なんという透明度の高さ、なんという力感…。このディスクはこの部屋で何度鳴らしたか分からないほど聴いているが、チェンバロもメゾソプラノやバリトンの歌唱も、実に新鮮に耳に響いた。この部屋でこれだけクリアなサウンドは聴いたことがなかった。

 

エネルギーバランスは、工事前よりやや高域側にシフトしている。これには慌てなかった。電源をいじった時によく起こる現象。それにあわせ、スピーカーのセッティングを修正すればいいし、数日もたてば、このままでも好ましいバランスとなるはずだ。

 

聴くべきは、音の鮮度の高さ、力強さ、切れ味など、基本的な音質傾向である。その素性よければ成功、素性が悪ければ失敗である。今回は明らかな成功、それも“大の字”が付くものだ。

 

工事から1週間が過ぎた今では、バランスの問題はすでに解決している。バランスは整い、分解能と力感が高い次元で融合しあっている。音の透明度は、日毎に高くなっていく。日毎の差はわずかだが、明らかに向上し続けている。毎日、朝の音出しが楽しみな日課になっている。“やった! 手を付けて良かった”。今では、電源の改善こそ、真先に行うべきものであると確信している。